ノイズトラブルはなぜ起きる
半導体工場・精密機器組立工場など、
現代の工場には、機器トラブルにつながるノイズ環境でいっぱいです。
高集積化された半導体の製造・検査装置は、いまや0.1ミクロン以下の精度が求められています。このような精度を実現するためには、装置が設置される建物の内部環境温度、クリーン度、振動等、厳格な管理・制御が必要ですが、このようなプロセスでは先端技術の開発・導入スピードは凄まじく、工場施設の環境が追い付かずに装置の性能が十分に発揮できないというケースが増えています。また、以下のように、装置にとって悪影響を与えかねない要因が同じ建屋・同じフロア内に混在している場合が多く見られます。


ノイズの影響を受けやすい高性能半導体検査・製造装置
検査装置
「測長SEM、欠陥検査装置、ICテスター、プロセス評価装置
製造・加工装置
EB描画装置、ステッパー、スパッター、イオン注入装置、エッチャー、レーザー描画装置、レーザーリペア装置、レーザーマーカー、マウンター
分析装置
ウエハーアナライザー、膜厚測定装置
ノイズトラブルをもたらす要因
振動・騒音
地盤の常時微動、交通振動、建屋内空調機器の振動、騒音、
工作・加工機械の振動・騒音
磁場
①直流磁場
- 地磁気
- 周囲装置のステージの移動(ステッパー、検査装置等)
磁性体(エレベーター、車両、台車等)の移動 - 直流電源
- 装置内部に直流電源、マグネット(電磁石、永久磁石)を持つもの
- 鉄道架線
- JR,私鉄の送電線(直流)
②交流磁場
- 装置電源
- 周囲装置の電源線、動力線、空調動力線
- 送電線
- 電力会社超高圧送電線、工場内高圧送電線
③ラインノイズ
インバーター電線、高周波溶融炉、高周波発生装置、放電加工機
ノイズトラブルを防ぐための対策
装置に悪影響を与えかねない要因各装置を正常に運転・稼働させるための対策として、次の2点が重要です。
精度を確保するための環境条件(精度異常防止)
装置の設置状況を満たすよう、建物・空調等の器(装置設置環境)を整える。
稼働中の正常な動作を確保するための環境条件(動作異常防止)
装置設置後に、周囲に設置される他の装置からの影響を防ぐ。装置が正常運転できるよう、安定かつクリーンな電源・水・空気を確保する。
さらに、装置が継続して安定に稼働するためには、建屋の設計建築時・装置納入前および装置稼働中にも、環境の変動を防止するための検討・対策を行うことが重要です。
ご存知ですか?
アースラインから装置に伝わる危険なノイズ
装置の安全・保安上不可欠なアースライン。通常は「低インピーダンス」になるよう、より太いケーブルでしっかりと接続されています。ところが、アースラインの規格は、「A種:DC抵抗値10Ω以下 D種:DC抵抗値100Ω以下」と、DC抵抗値の規定しか定められておらず、高周波インピーダンスについては規定がありません。
例えば半導体工場等の場合、一般的にアース線はケーブルラック内を動力線と一緒に長い距離にわたって配線されていますが、仮に床面から高さ2mのケーブルラックでアースラインの長さを100mとした場合、そのインピーダンスは10kHzで14.4Ω、100kHzで106.4Ω、500kHzで862Ωと、高周波では非常に高い数値になります。
このことからも、アースラインは(大地間やケーブル間の)電磁誘導電流が伝わりやすく、これがノイズを生み出しているのです。
このように装置に深刻なトラブルを起こしかねないアースライン・ノイズですが、アース本来の「安全・保安」上の機能が第一優先されるため、一般のノイズフィルター(インダクター等)で対応することはできません。そのため、電源ライン周りの「ノイズ対策の強化」と「ケーブルの引廻し経路の変更」などでしのいだり、アース線を外すといった、究極の方法をとる場合もあるのが現状です。
アースライン・ノイズによるトラブルには、次のような特長が見られます。
- 恒常的なトラブルではなく、突発的であることが多い。
- 再現性があまりなく、トラブルの発生頻度も一定ではない(条件によるが数日~数ヶ月に一度)。
- トラブルの発生場所はノイズ発生機器周辺のみではない。アースライン経由で、同じ建屋内の遠く離れた場所でもトラブルが発生することがある。
- ノイズ環境の違いから、メーカーサイドでトラブルがほとんど起こらなくても、客先に納入した途端に起こる事が多い。